女の子が好きなもの。
かわいいものにお洒落、それから噂話。
それにとびきり甘いもの。
召しませ男子
今日も今日とてバスケ部をサボって、俺、湯浅 慎は帰る気満々。
そんな放課後、クラスメイトが窓際の席に数人残って何か盛り上がってた。
「な〜にやってんの?」
覗き込んでみると、彼女たちの手には一冊の雑誌。
最近見るようになったイケメンのモデルがポーズを取るその紙面には
『○○系男子』の文字が踊っていた。
「へ〜こーいうの興味あんの?」
診断用のチャートを指差すと、女子の一人はアッサリと首を振る。
モデルのファンだから買っただけらしい。
でもこういうの考えるのは面白いよね、と話し出す彼女たちの横に椅子を持ってきて俺も座り込む。
チャートにはお菓子の名前やら、飲み物の名前までついた『男子』が並んでいる。
「俺は何系男子なんだろ?」
チャートを辿ろうとしたら、一人がさっと雑誌を取り上げる。
あれ?と思って顔を上げると、真剣な顔で俺を見る数人の瞳。
「・・・慎くんは、雑食系で飽食系男子?また彼女変えたでしょ〜?しかもすごい美人のお姉様!」
「や、元々付き合ってないから。変えたとかないし?」
女子の呆れたような揶揄するような声をサラリかわす。
実際オツキアイを承諾した覚えはないのだ。でもまぁ・・・完全に否定はできないかな。
今、懇意にさせてもらってるOLさんは確かに美人だ。
それにしても「女なら誰でもいい雑食系男子」に「常にお腹いっぱいもててる飽食系男子」はない気がする。
子供や熟女に興味はないし、ついでにそこまでもてるわけじゃない。
「にしてもさ、これはいくらなんでも酷くない?」
指差す先には「軽食系男子(つまみ食いに便利)」とか「欠食系男子(がっついてるけどモテない)」などの文字。
数人の顔が脳裏をよぎったけど、口には出さない。これも世渡りのためだ。
ある意味つまみ食いされるのも役得だけどね、なんて思ったことも内緒。
と、窓の下を見慣れた顔が通っていくのが見えた。
「涼っちー!氷川―!まーたー明日―!」
窓を開けると大きく手を振る。
声に気がついた二人は顔を上げて、片方は笑顔で手を振り返し、片方はマユを上げただけで前を向く。
はいはい、いつもの反応ですね。俺は小さく笑った。
窓を閉めると女子の視線は二人に注がれていた。
「神原君はなんだか平等に優しい感じがするなぁ。
もし彼女になれても、他の人にも優しくってヤキモチ妬いちゃいそう」
「でもでも!そんな神原君を甘やかすとか良くない?」
「うわそれヤバイって!想像したらドキドキしてきちゃった!」
「そんな神原君は、マシュマロ系男子!ふわふわ優しくって甘くって!」
「氷川君は・・・逆に恋人にはすっごく甘いとかだったら萌えるよね〜!」
「そうそう!面倒くさそうにしてるけど、結構マメだったりして」
「氷川君はビターもスイートもいけるコーヒー系男子!」
「スイートモード見てみた〜い」
勝手な名前をつけてキャッキャとはしゃぐ彼女たちに、女の子というのはよく見ているんだなと感心する。
まぁ好きな子のことともなれば、観察眼が鋭いのも納得ではあるけど。
あのコンビは人気があるのだ。特に同級生と下級生に。
ここにも彼らのファンがいることも、なんとなくわかってる。なかなか報われない恋だとは思うけど。
ふと思いついて、ケータイを開いてメールを送る。
すぐに返ってきた返信に破顔すると俺は用意してあった鞄を手に取った。
「え、慎、もう帰っちゃうの?」
「まだいいじゃーん」
残念そうに言う彼女たちにごめんねとウインクひとつ。
椅子をガタガタと戻すと、教室を飛び出して下駄箱に向かう。
校門にはふてくれた銀色と、それを宥める亜麻色が待っているはずなのだ。
苦い顔と甘い笑顔、二人まとめてハグしてやろう。
それから三人でカフェに寄るんだ。
「だって、俺は甘味系男子だからさ」
お昼ご飯はクリームパンにチョココロネ、それからイチゴ牛乳。
コーヒーは嫌いじゃないけど、できれば甘いのがいい。
そう、例えばマシュマロを浮かべたりね。
こっそり笑って足を速める。バスケ部自慢の俊足が二人を捉えるまであと少し。
<アトガキ>
滑り込みました・・・(遠い目)
今回はノリに乗ってネタを選んだくせに、もんのすごい難産でした・・・。
なので、内容も薄いというか・・・あれ?ない?みたいな。
コーヒーでいうなら、うっすいアメリカンですね!
ヘタ連を封印すると、こんなにも化学部って書きにくいものなのかと痛感しています。
ゴメンネ蓮、思いのほか海市はキミに頼ってたみたいだよ(笑)