夜になるとその感情は力を取り戻す。

空に浮かぶ月に呼ばれるように。

 

「それがもし運命だというならば。」

少年は小さく呟いた。

 

消えていく夜の忘れ物。

やってきた朝はその存在をゆっくりと空に溶かした。

 

 

 

明け方の

 

 

 

 

「おはよう、瑞樹。」

朝、一番に出会うのは決まって彼だった。

「蘇芳、おはよう。」

不思議な感覚だった。

夜の間、頭の中で何度も殺した人に、自分は笑顔で返事ができる。

「蘇芳は今日もバイト?あんまり無理しないようにね。」

心配すらしている振りができる。

明るい太陽の下でなら、どんな冥い感情も覆い隠していることが出来る。

「・・・瑞樹?」

ふと蘇芳が怪訝な顔でこちらを見た。

この人は聡い。

自分に向けられる好意にはとことん鈍いのに、人の感情に敏感に反応する。

「ん?何?どうかした?」

でも、こうやって笑ってしまえば、彼はそれ以上の追求はしない。

困ったように笑うだけ。

決して一定以上には踏み込んでこない、そして・・・踏み込ませない。

 

校庭に入って少し行くと、グラウンドに草太の姿が見えた。

目ざとくこちらに気がついて、練習そっちのけで大きく手を振ってくる。

蘇芳は小さく手を振り返して、練習に戻るように促した。

校舎に目を向ければ窓際に見慣れた時雨の読書をする姿。

本人は知らないだろうけど蘇芳はそれを見て、少しだけ安心したような顔をするんだよ。

もう少ししたら、蘇芳の携帯からは聞き慣れた着メロが流れてくるんだろう。

その皇嗣からのメールに蘇芳は手馴れた様子で返事を返す。困ったようにでも少し嬉しそうに。

 

僕といる時の君は、他人から見たらどうなんだろう?

彼らと関わる時のように幸せそうに見えるのかな?

僕にはよくわからない。

僕自身、蘇芳やその周りの人達といるのが楽しいような気がするから本当に、よくわからない。

絶対そんなはずないのに。

 

「ねぇ、あそこに月があるの見える?」

そう言って指差すと、蘇芳は少し目を細めて空を見上げた。

「あぁ・・・なんとか見えるな。 言われなきゃ気がつかなかっただろうけど。」

君が忘れていても、忘れようとしていても。

僕が忘れてしまいたいと心のどこかで願っていたとしても。

「昼間も月はあるんだよね。」

蘇芳は答えないで、じっと月を見ていた。

 

 

 

空に溶け込んで目立たなくても、太陽に姿をかき消されても、そこにあるものは。

 

 

「だからね蘇芳。目に見えるものがすべてじゃないんだよ。」

 

 

飽きずに月を見る君の喉にいつか刃を突きつける日を、僕は待ってるんだ。

 

 

 

 

 

久し振りの更新がコレかよ・・・とかいう苦情が聞こえないでもないのですが・・・(汗)

その辺本人が一番思ってますので・・・!!

てな感じで、お久し振りです〜の海市です。

もはや文屋廃業かというくらい書いてなかったのですが、さすがにヤバイだろうと書きました。

リハビリ中ということにしてやって下さい(土下座)

ゆずのお題が難しいんだよぅ・・・とか言い訳してみたりw

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