きっとこれは夢なんだ。

そうじゃなければ、こんなに都合のいいことが起こるはずがない。

 

だって、雨宮先輩が普通だなんて・・・!

 

 

 

夢の続き

 

 

 

 

思えば朝から、雨宮先輩の様子はおかしかった。

雨が降ってたけど、自動開閉式雨傘「ヌレン君3号」じゃなくて、普通の傘をさしていた。

(ヌレン君という名前、蓮が嫌がるんだよな・・・。レンが付くだけなのにね。)

いつもならやたら高いテンションでかまってくる筈なのに・・・。

「おはよう、涼。」

なんて微笑みながら爽やかに挨拶していた。

(側にいた女子が「あんな風にしてると雨宮先輩って結構素敵だね」なんて言ってた。)

昼に見かけた時は、いつものヤバイ発明弁当じゃなくて購買のパンを食べていた。

(いつもの弁当は人類に有害な匂いがしてたから、誰も近寄れないんだよね。)

そしてなにより・・・

「この程度の問題が、この天才雨宮に解けぬと思ったか?!

 愚かだな!ふはははは!!」

っていう、先輩の声が聞こえてこなかった。

(教室の階が違っても聞こえてくるんだ。同じクラスの人は辛いだろうな・・・同情するよ。)

「科学の発展のため!さぁ、その身を捧げるがいい!!」

って言葉も

「頼む雨宮!勘弁してくれ!!ぐあ〜!!」

って叫び声も聞いてない。

(先輩に目をつけられた何人かの先輩が、強制的に被験者にされてるんだよね・・・合掌。)

 ア  マミ   ヤ ―

と書かれた血文字も今日は見なかった。

(毎日どこかには書かれてるんだよ?血って落ちにくいから、掃除も楽じゃないのにね。)

 

やっぱり、これは夢なんだと思う。

だって、雨宮先輩があまりに普通だもの。

 

 

部室には俺と雨宮先輩の2人だけ。

「・・・涼?どうかしたか?」

こんなに穏やかな雨宮先輩の声を聴いたのは、初めてかもしれない。

いつもなら怪しげな色の煙を出している試験管もないし、地球外生命体のような動きをしている機械もない。

「・・・なんか、変ですよ。」

俺は正直に言う。

「何が変なんだ?」

「あの・・・先輩、何かありましたか?」

先輩は何も言わない。

どこか無表情にこちらを見るだけ。

「・・・雨宮先輩?」

生気の感じられない人。

不意に不安になって先輩の顔を、俺は探るように見た。

 

「・・・いい加減にしないと、怒りますよ?俺・・・。」

「ふははは!ばれてしまったようだな!!」

 

 

動かない目の前の雨宮先輩。

高笑いするカーテンの影の雨宮先輩。

 

「なかなか良く出来ているだろう?バッテリーが長持ちしないのが弱点だがな!

 皆、すっかり騙されていたぞ!

 どうだ?影武者くんプロトタイプTモードアマミヤの素晴らしさが涼にもわかったか?」

 

あぁ・・こういう人だったっけ・・・。

無駄に長い名前も、使い道のない発明も慣れたものだよ。

 

「しかし・・・やはり人工知能の組み入れが上手くいっていないようだな。

 こんなに簡単に疑われては意味がない・・・。

 学習機能をしっかり組み込まないと、利用価値半減だ!

 やはり研究の余地があるな!!これから実験!実験だ!手伝え!涼!!」

 

いえいえ、人工知能は完璧ですよ〜。

ちゃんと普通の人間に見えましたから。

むしろ普段の先輩が明らかに異状なんです。

そう言えたらいいのに・・・。

 

しっかり腕をつかまれ、ふと悟る。

あぁそうか、これは悪夢なんだなと。

そうだよ・・・これは悪夢だ。

 

俺は悪夢の続きを生きていくんですね・・・。

 

 

 

 

 

 

これで企画4個目・・・。

ゆずはこういう題は書きやすそうって言ってたけど、とんでもないっす(汗)!!

だって、へなちょこだもん!!←力いっぱい

初めは朱の記憶の方で書こうとしたんだけど、瑞樹様のどす暗い(どす黒い+暗い)話しか出てこなくて断念w

瑞樹様不幸話ばっか書いてると、呪われちゃうもんね♪←瑞樹様最強伝説

次回は『モザイク』・・・チッ面倒な題を・・・な〜んてねw

えへ?頑張りま〜す!←ゆずの送る殺気を感じてダッシュで退場!!

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