「おや?仔猫がいるね・・・。」

 

青年は眼鏡の奥の目を細めてつぶやく。

視線の先では柔らかな光のカーテンが、小さな2つの命を照らしていた。

それはある土曜日の午後のこと。

 

 

 

冬の木漏れ日

 

 

 

 

「遅れてきたのは俺が悪いよ〜?

でも、だからって犯罪に走るのは止めてほしいんだけどなぁ。」

 

不穏な言葉は、端正な顔立ちの黒髪の青年の口から発せられた。

心底嫌そうなその声に、眼鏡をかけた青年が振り返ることもなく手をひらひらさせた。

目は陽だまりに丸くなる2匹の猫・・もとい2人の少年達の片方に向けたままだ。

季節は冬になったばかり。

冷たい風は植え込みの陰のそこには届かず、暖かな日差しのみがそそがれている。

その中で2人の少年はぐっすりと眠っているようだ。

・・・ダッフルコートから覗く細い手足を、薄ら笑いを浮かべて見ている人物に気がつくこともなく。

 

 

「いい加減にさ、そのやらし〜い目で見るの、やめたほうがいいんじゃないの〜?

 起きたらたぶん、泣かれて警察呼ばれちゃうよ。」

「ナオヤ・・・君も大概、失礼だな・・・変態ロリコンじゃあるまいし。

でもまぁ、10年もしたら僕好みの子になってるかもしれないけど・・・ね。」

 

10年したら自分だって年をとるんだから、やっぱロリコンじゃん・・言いかけて青年は止めた。

 

「ふふ・・・本当に楽しみだ・・・。」

 

笑う友人の、見慣れているはずのその顔がちょっとだけ・・・怖い。

そっと視線を落とすと、小さな2人に心の中でつぶやく。

 

(ごめん・・・ここで待ち合わせた俺のせいだね〜。

 でもさ、10年後にも会うとはとっても思えないし・・・大丈夫だよね、きっと!)

 

エヘヘと締まりなく笑う青年の頭は、真面目そうな顔と高校の成績のわりに非常にライトだった。

ついでに言うと、他人に降りかかる火の粉の心配より我が身が可愛いタイプだ。

 

「ユ〜キ〜?未練がましく見てないの!

さっさと行かないと遅れちゃうよ〜?」

 

明るい声が眼鏡の青年を促して、2人は歩き出す。

が、すぐに立ち止まった。続けて小さな声が落とされる。

 

「・・・少年、ナイト頑張れよ〜!」

 

そして小走りに公園を後にした。

 

 

 

2人の青年が去った後、片方の少年がゆっくり目を開いた。

 

「なんだよ・・・あいつら・・・。」

 

狸寝入りは、どうやら見破られていたらしい。

嫌な汗が背中を伝った感触に身を小さく震わせると、横で幸せそうに眠り込んでいる幼馴染に目をやる。

『可愛いわね〜』と頭を撫でてくるようなオバサンや、『飴でも食うか?坊主達』なんて言うオジサンには会ったことがある。

 

(でも、ああいうのとは次元が違う・・・なんだかわからないけど・・・ヤバイ・・・?)

 

「・・・起きろよ、リョウ!」

 

少し乱暴に揺すると、大きな目が何度か瞬かれて自分を見る。

木漏れ日が眩しいのか、細められた瞳は確かに仔猫のもののようでもあった。

 

「ん・・・?レンちゃん、どうかした?」

「なんでもいいから、行こう!」

「え?え?」

「ホラ、手!」

 

なんだか分っていない幼馴染の手をひき、少年は急ぐ。

動物的勘が、危険信号を発している。

あいつらが戻ってくる前にココから離れよう、それだけを思って気がついたら全力で走っていた。

二人は公園から出て、広い通りに来てやっと立ち止まった。

息を切らした幼馴染は恨めしそうな顔で少年を見る。

 

「レンちゃん酷いよ〜!いきなり引っ張るんだもん。」

「・・・ごめん。痛かったか?」

「ううん、大丈夫だよ。」

 

謝ると、ケロッと幼馴染は機嫌を直した。

浮かぶのは陽だまりのような満面の笑み。

繋がれた手が暖かい。

髪に付いている枯葉を取ってやると、くすぐったそうにクスクス笑うその顔はあまりにも、無防備だ。

 

少年はふと使命感にかられた。

迫りくる変態から、この人懐こく危なっかしい幼馴染を守れるのは自分だけだと思った。

 

(オレ、強くなる・・・!!)

 

決意した少年7歳、ある冬の日のお話。

 

 

 

 

 

 

本人の気分で始めてしまった企画ですが、あはは・・・(汗)。

止めときゃよかったかも・・・。

題はゆずに考えてもらって、海市の貧しい想像力で書いてます。

今回は『帝都高校科学部事件簿』のサイドストーリーになります。

説明ないと絶対わからない話ですんません!でも、たぶん本編見たらわかるんじゃないかと・・(汗)

本編完成の目途も立ってないのにこんなん書いて、意味ないじゃんね・・・はは・・。

次のお題は『流星群』です。

ロマン溢れるお題をいかに海市がダサいものに仕立てるかにご期待下さいw(←死亡)

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