もし神様って奴がいるのなら聞いてみたい。
主人は選べないんですか?って聞いてみたい。
がっつり胸倉掴んで聞いてみたい。
だから僕らは旅をする 第2章
人目を避けた路地裏で、アホの王子がごちゃごちゃいうのをガツンと(殴って)黙らせて、俺とリョウとレンは黙々と服を剥いだ。
レースだらけのビラビラした襟、膨らんだ袖、かぼちゃパンツ、白いタイツ。
こんな服、何処に隠し持ってたんだろう?
いや、それ以前にどこかで売ってるんだろうか?
アホのアホたる所以を見せ付けられて、俺はこれ以上ないくらい大きく溜め息をついた。
「リョウこれからどうする?王子の服、城に取りに戻るか?」
「う〜ん、さすがに戻るのはまずいよ。こっそり出してもらったんだし」
「だな」
「その辺で買ってきて済まそう?シン、頼める?」
「あぁ了解」
「お金はマイポニーZの第二小腸の辺にしまってあるから、抉り出して使って」
・・・リョウは綺麗な顔して言うことがたまにグロイ。もう慣れてるからいいけどね。
俺は初心者冒険者向けの防具屋に入った。
恰幅のいいおばさんが、ニコニコしながら商品を勧めてくる。
俺は動きやすさ重視で、極シンプルな革鎧を選んだ。
これならある程度の攻撃は防げるし、軽いから回避力も上がる。
見た目も・・・まぁ勇者っぽい気がする・・・かもしれない。
王家の剣とはだいぶ見劣りするけど、こればっかりは仕方ないよな。
ついでに皮の帽子と、手袋も買った。
ニコニコ話してたら、おばさんが皮のブーツをサービスしてくれた。
リョウが俺を買い物に出す理由はこれなんだよな。
あんまり自覚はないけど、俺ってマダムキラーらしい。
よしよしって、満足して店を出る。
たいした防御力はないけど、最初の方の敵にならこれで充分なはずだ。
あとは出てきた敵から剥ぎ取っていけばしばらくは大丈夫だろう。
冒険なんて追い剥ぎ万歳だもんな。うん。
買ってきた装備をまた3人で黙々と着付ける。
足元のインナーが白いタイツのままだから、微妙に変態っぽい感じがしないでもないけど、そこは目を瞑った。
合言葉は『さっきよりマシ』。この呪文さえあればたいていのことは我慢できるってもんだ。
王子が眼を覚ます頃には、俺達は都の外れの大門まで来ていた。
この門をくぐれば草原が広がり、その先には森がある。
その更に先には何があるのか、まだわからない。
旅はここから始まるんだ。
俺達は門から一歩踏み出した。
と、突然視界がフラッシュした。
「ん、敵襲?6匹かな?」
リョウが優雅に弓を構えた。
レンもスルリと曲刀を抜く。
俺ものんびり杖を構えた。
でも緊迫感はまるでない。数は多いけど敵がLv.1だからね。
学園でLvも上げてきてる俺達が緊張する相手じゃない。
もし緊張する人がいるとしたら、温室育ちで実戦経験0の王子陛下だけ。
「ん〜あれ?ここは?」
「王子、今バトル中」
「へ?えぇぇぇぇ?!」
王子のすっとんきょうな声に敵・・・っていうか可愛くすらあるウサギ型のモンスターなんだけどね・・・も驚いたみたいだ。
ちょっと逃げ腰になってるけど、ここは逃がすわけにいかないな。
王子のLvを上げる大事な経験値源なんだから。
「一気に片付けよう」
リョウの言葉に4人は頷いた。
あ、マイスターは戦闘には基本的に不参加なんだ。
マイスターが参加すると、確かに敵は殲滅できるけど、味方も無事じゃ済まないからね・・・。
「よし、頑張るですぅ☆・・・ギャッ」
「ちょ・・・一撃で倒れちゃうってどうなの?」
「防御力なさすぎだよね・・・。復活の葉!」
「ありがとうですぅ♪・・・ぐはっ」
「あああ!また・・・」
「この薬高いのに・・・復活の葉!」
「ごめんなさいですぅ〜・・・げはぁっ」
「なんでこいつばっかり攻撃喰らうんだ?」
「普通の人なら避けられるのに、まるで避けないからだよ。復活の葉!」
「ただいまですぅ〜うわぁぁ」
「・・・・・・」
「あーあ、また倒れたし・・・とりあえず敵さん片付けちゃうとする?」
「だな・・・」
ちゃらりらりーん♪
何処からともなくなんともしょぼい音がして、俺とレンのレベルが上がった。
収入は傷薬が2つに、200ボン。
ちなみに200ボンといえば、平均的な初等科生徒の遠足のおやつの値段だ。
かたや王子の回復に使った復活の葉の値段は1枚35000ボン。
もう一度回復させようとした俺の手を、リョウがサッと制した。
「シン、蘇生魔法覚えるのってLvいくつ?」
「んーと・・・確か28?」
「俺はLv.17で薬の造り方覚えられるんだ。レンは確かLv.15で必殺技覚えるよね?」
「あ、あぁ、まぁ」
「各自、覚えるまで森に篭れ」
その時のリョウの笑顔の怖さはきっと、伝説の魔王も越えていたと思うよ。うん。
最低レベルの敵しか出て来ない森で、地味に狩をすること数日、俺は見事に蘇生魔法を覚えた。
他に誰もいない森に響き渡る「ちゃらりらりーん♪」は軽くトラウマになりそうだったよ。
ほんと、もうやりたくないね。
リョウとレンも無事にレベルアップを果たして戻ってきてた。
久々の再会だっていうのに、二人の顔色は冴えない。っていうか切羽詰まってる?
「シン、逃げるぞ」
「は?なんで?」
「とにかく走れ」
俺はとりあえず森に走り戻った。
さようなら、夢に見た柔らかいベッドと乾パンと干し肉以外の温かいご飯。
だけど後ろから追ってくる超殺気立った声を聞いたら、そんなものに未練はないよ。
ごめんなさい、贅沢言わないから助けて神様。
数時間走ったり隠れたりを繰り返して、俺達はやっと湖畔に落ち着いた。
マイポニーZさえなかったらこんなに苦労しなかった気がするんだけどね。
覚えたての蘇生魔法で倒れたままだった王子を回復させながら、リョウとレンと話す。
事情もわからずじゃさすがに困るからね。
マイスターが俺達の旅の資金を使い果たして買ったよくわからない装置で、宿を一晩で灰に変えたんだと聞かされて、そりゃ納得。
ほとぼりが冷めるまで、しばらくはここには戻ってこれるはずもない。
こうして俺達は、住み慣れた都を後にしたんだ。
ムツキ王子 クラス:勇者(見習い風味) Lv.1
リョウ クラス:アーチャー Lv.17
レン クラス:剣士 Lv.18
マイスターことタカト クラス:発明家 Lv.不明
シン クラス:魔術師 Lv.29
つづく
セルフ宿題こと一人罰ゲームしてます・・・ども、海市です☆
いや、実は朱の記憶組でクリスマスのSSを企画してたんですが・・・イブにデータを紛失しました★
痛いサンタのプレゼントでした。
ネタだけは残しておいたので、いつか日の目を見られるといいなぁ。
で、急遽あげることにしたのが、こっちでした。
ところでセカファンって、最後に更新したのいつだっけ?(にっこり)
ごめんなさい・・・もう少し間隔あけずに書けるように精進します・・・(涙)
書きたいエピソードはいろいろあるんですけど、裏設定もいろいろあるんですけど、うまく話が繋げないんですよ・・・。
↑文屋としては致命的★
ちなみに海市はけっこゲーマーです(笑)
でもRPGにどっぷり浸れずに、つい突っ込みを入れてしまう哀しい現実主義者です★
だからそんな視点で書いてます。
しばらくのんびり更新してみようと思ってます。
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